ああ、懐かしの学生時代

宮本輝の「青が散る」を読みました。
宮本輝はなんとなく敬遠していたんですけれど、思っていたよりとっつきやすい。というか、文体がまんま国語の教科書。

燎平は夏子の目を見つめ、夏子は若さとか活力とかいったものではないもっと別な大切な何物かを喪ったのかもしれないと思った。

こんな書きぶりはまさしく教科書!!

さて、ドラマ化もされたこの作品の舞台は大阪郊外茨木市*1に新しく開かれた大学。テニス部に引きずり込まれた主人公と周囲の若者たちが青春に燃え青春に傷つく、そんなストーリー。
何度か繰り返される「4年間の足踏み」という言葉に私としては楯突きたくなるけれど、楽しくも物悲しい人間模様がとても甘酸っぱい感じ。
舞台が阪神地域で、しかも我らが馴染みの「阪急神戸線」の「六甲の駅」が頻出。三ノ宮のカフェでお茶したり香櫨園のテニスクラブで汗を流したり、そういったノスタルジーもページをめくる手を加速してくれました。

登場する老教授のセリフから印象深い節を抜粋。

「テニスもええが、学問も大事や。文武両道であってこそ青春や」
「若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか」

若者同士の交流だけでなく、こうした年長者のしびれる言い回しがすばらしい。


とはいえ、「テニサーは勉強そっちのけで色事ばっか」を綺麗に書くとこうなります、という小説ともとることが出来るかも。意地悪く言えばね。

*1:大阪郊外茨木市は本文ママ