奇人変人

図書館で米長永世棋聖の「われ敗れたり」を借りて読みました。
ユーモアがあり平易で読みやすく、かつ中身も濃い。将棋の話がさっぱり分からない私でもすらすら読めて面白い。情報工学的な視点から見ても的を射た深い考察が綴られており、実に良い本でした。

中盤の局面を指して言った「位勝ち」という表現がとても興味深い。コンピュータの評価関数では劣勢な形だろうけれど、プロの視点からは優位な形に違いない、ただし論理的・具体的になぜどのくらい有利なのかを評価することはとても難しい、とでもいう状況なのでしょうか。
なんか知らないけど凄いんです、というものをどんどん定量化していけたら面白いだろうなあとおもいますね。武道の世界でもそういうの一杯ありそうだし。

ところでこの米長永世棋聖、色々曰く付きの人物だそうですね。
将棋会館の窓から放尿したり負けた悔しさに全裸で疾走したり勝った喜びに裸踊りを披露したり数え切れない女性経験があったり。
これだけ取り上げるとただのダメ人間ですが、駒を持てば歴史に名を残す強者であり、筆を執れば名文家であり、なおかつ将棋連盟会長として経営・運営にも辣腕を振るい、しかもユーモアにあふれるときたら、なんと言ってよいやらなんとも困ります。お近づきにはなりたくないけど遠巻きに眺めている分には凄く楽しそうというかなんというか。良い方も悪い方も突き抜けた方だったんでしょう。亡くなったことが惜しい方には違いない。


個人的には加藤一二三九段の方がかわいらしくて無邪気な感じがして好きなんですけどね、これは余談。