よろしくお願いしまーす!

なんとなく気になっていた映画、サマーウォーズを見てきました。
で、率直な感想としては、あんまり好きになれなかったかな、というところ。なんとなく全体を通して「昔は良かった」って言ってる気がして、いつまでも過去の良かった部分だけ都合良く抜き出してしかもそれに囚われてんじゃないよと言う気分。
あと、登場人物達が肝心の所でウジウジして結局他人頼みになったり捨て鉢になったりするところに酷く苛立ちました。絆だ団結だといいながら全然まとまってない家族の振るまいとか*1、やたらにあちこちぶつけたり散らかしたり乱暴な仕草とか、そういうところで細々イラッとさせられた映画でした。でも花札覚えてみようかなという気にさせた点は+評価します。
あと、のっけから「Shorの因数分解アルゴリズム」ってのが(ちらっと)出てきて、個人的に学生時代を思い出して懐かしいような癇に障るような。身の振り方をずいぶん変えちゃったせいかなあ。
情報工学的な部分に着目するといろいろ突っ込みたいところがあるのはいつぞやのダイ・ハード4.0と同様。
「モジュロ演算を使って…」ていう台詞とか前述の「Shorの因数分解アルゴリズム」とかの演出を鑑みると、"solve me!(解いてみな)"って出てくる数字の羅列はたぶん"factorise me!(因数分解してみな)"ってことなんだろうけど、そんなのあんな簡単に解けたらそれこそ国防総省にマークされちゃうぞ、と思ったり。こいつがいれば量子コンピュータなんていらねえぜ*2!ってね。
それに暗号化されてるとはいえわざわざ入力画面でキーを表示するなんてセキュリティとしてどうなのよ、ヒント機能としてもあり得ないでしょ、しかも一晩で55人もの人間が破ってる暗号で世界一のセキュリティってなんじゃそら、とか。
核だの衛星だのそんな国家機密レベルのものを世界横断的なネットワークに接続してあまつさえ操作もそのネットワーク経由で可能なんて、そんな運用する国家はちょっとあり得ないんじゃないの?とか。
知識欲を持ったAIだとか言う割に、花札勝負の最中にネットワークから情報を攫って学習したり取り込んだアカウントの中から履歴を検索して戦略に反映させたりする様子もなかったりして拍子抜けした、とか。格闘の方は取り込んだアカウントの分だけ強くなってる風に演出されてたのに。
設定を現代・現在にして半端に進んだ科学による世界を舞台にしちゃったがためにあちこち気を散らしたり揚げ足を取られちゃう結果になってしまったそんな感じ。いっそドラえもんよろしく遙か未来を持ってくれば別の演出で楽しめたのかも。素直に楽しめないっていうのは嫌な大人になっちゃったってことなのかしら。
ちなみに備忘録というか回顧録というか、量子コンピュータを利用したShorの因数分解アルゴリズムにおける素因数分解の手順は以下の通り。modと冪乗さえ知っていれば計算自体は簡単。

準備するもの
素因数分解したい数N(Nは何か2つの素数の積であることだけ分かっている。つまりN = p * qであり、Nからpとqを知りたい。)
・Nと互いに素(最大公約数が1)な自然数a (1 < a < N)

  1. a^r mod N = 1 であるrを見つける。aとNが互いに素であれば必ず存在する。ひたすらrを増やしていけ!
  2. rは偶数ですか?奇数ならaを変えてやり直し。
  3. a^{r/2} - 1とNの最大公約数はいくつ?1かNでなければその公約数がpまたはq、すなわち素因数です。1かNになったらaを変えてやり直し。

量子コンピュータでないとダメな理由は、探索すべき領域、つまりaの候補が多すぎて逐次計算の電子計算機じゃ追いつかないから。映画じゃ約2000桁の数ってことだったけど、原稿用紙5枚分の整数に対して手計算だの暗算だの、そんなこと出来たらやっぱりしかるべき機関が確実にマークしてると思います。侘助おじさんなんて目じゃないよ!

*1:実際の大家族ってそんなのかも知れないけれども、それにしてもちょいと自分勝手な振る舞いが目に付くような。

*2:うそ。ちょっと言い過ぎ。