寄り添う二人

とある老夫婦が職場にやってこられました。
歳はなんと互いに90目前、旦那さん曰く「連れ合いは戦争の時に天涯孤独になってな。戦争が終わってじきに一緒になってもう70年近くになるかのお。」というからさらにビックリ。夫婦どちらもいかにも柔和な印象の、たとえて言えばお地蔵様のような、歳はかく取りたしと思うお顔立ち。

「子供の事は幾つになっても苦労するもんじゃ。まあワシもさんざん親を泣かせたしな。」
「親ほど騙しやすいものはないと思うてな、上手にくすぐったらええ。親はやっぱり子供にゃ弱いんじゃから。」
「泣いて見せて後ろでぺろっと舌を出してもええからな。生きとるうちは親をええように遣えばええ。」
「しかし最近の若いのはそこらへんの加減が上手じゃないんかな。早うに泣きついてきたらもっとやってやりようもあったろうに。」

なんというか、しみじみともの悲しさが伝わる1件でした。