孤独死について

だいぶ時間も経って一段落ついたので、そろそろ書いても良いだろうと思ったので書いてみます。


倍以上年の離れた従兄がアパートで孤独死しました。
死亡して10日ほど経ってから近隣の人が異常に気付いたのか管理会社だか警察だかに通報して発覚しました。


孤独死って、一般的に発見されにくいのはどんな人だかおわかりですか?
単身の高齢者は、ヘルパーさんや行政サービスの人が結構出入りするので何かあったら案外直ぐに対処されます。
以前の職場で言われていたのは「60代の独り者が危ない」ということ。


結構体は動くので病院通いをするほどでもない、ヘルパーさんのお世話になるのもまだ先、ところが実は心臓病や脳内出血など突然死のリスクはかなり高く「うっ!」と来て部屋で倒れでもしたら誰にも気付かれずそのまま他界。
こんなことになりがちだからです。
仕事も退職し趣味の付き合いも薄く近所に顔なじみもいない、そんな人は特に何かあっても気付かれにくいです。
従兄も正に60代半ばでした。


ちなみに、助かりこそしませんでしたが、同じような高齢男性が死亡してから翌日には発見されたケースを1つ知っています。
それは行きつけの飲み屋さんから「毎日来る人が今日は来ていない、昨日ずいぶん顔色が悪かったが大丈夫なのか」と大家に連絡があったから。
なんでもいいですけど、何かあったときに早期に連絡が付くような関係を持っておくことは有益だと思います。


さて、実はこの従兄について、死亡が発覚する直前に別の親戚から「関係先から5月以降連絡が付かないと知らせがあったし、手紙も届かず返ってきたりするから、あなた車で1時間ほどのところに住んでるし、アパートの様子を外から見るだけ見てきてくれる?」と相談がありました。
「小間使いにしやがって、面倒な…」と思いましたが、色々と訳あって放っておくことも出来ずに教えられた住所に行ってきました。
実のところ、この時点で仕事の経験から私は3つの可能性を考えていました。

  1. 只の怠惰
  2. 孤独死
  3. 自営業の商売がうまく行かずトンズラ

3は今回の場合ほぼネタですが、上の方から可能性が高いです。
ちなみに居住の確認だけなら夜行く方が良いです。もちろん明かりで生活しているか分かるから。
こういう借家でチェックするのは先ず郵便受け。名前が書かれていればまだ済んでいる可能性が高い。最近は名前を出さない人も多いようですが。
次に郵便があふれていないか。新聞や郵便受けがあふれていれば、長期不在です。
さらにベランダや物干し場。生活感がよく現れています。
あとは電気メータ。動き方でどの程度家電製品が使われているかが読み取れますから、エアコンなんか使ってたら居留守でもバレバレ。


今回、古いながらもオートロックのアパートだったので部屋の玄関には近づけませんでしたが、

  1. 郵便受けには名前が出ている
  2. 多少中身は有ったものの郵便はあふれていない
  3. ベランダからテレビのものらしい明かりが漏れている

以上の事から少なくとも当人が部屋にいることは分かりましたので、そのままこのときは引き上げました。
結果から言えばこのとき既に帰らぬ人となっていたわけですが。


では、なぜ部屋を訪問しなかったのか?


あまり関わり合いたくない親族関係だったということが一番で、次に21時を回っていたこと、そしてなにより「死体の第一発見者になりたくなかった」からです。
他の不動産管理業者がどうしているのかは知りませんが、私の以前の職場では室内死が強く疑われる場合でも「絶対に第一発見者になるな!」と口を酸っぱくして言われていました。
私は直接担当したことはありませんでしたが、死体の第一発見者になると警察にたびたび事情聴取をされたり大変面倒なことになるそうです。


ではどうすべきか?
真っ先に警察と大家(管理会社)を呼ぶんです。
そして必ず警察に先に部屋に入ってもらうんです。
これで第一発見者=警察となり、だいぶ楽が出来ます。
大家を呼ぶのは鍵を持っているから。いくら警察でもドアの錠を破壊して入るのは大変ですから。
大家もプライバシーの問題などで鍵を持っていない場合は鍵屋さんを併せて呼ぶことになると思います。


人が室内死していると、ドアの外から「臭いで分かる」んだそうですが、あいにくこの場合はオートロック付きアパートだったので私には出来ませんでした。
ただし、今にして思えば11月の夜にも関わらずベランダの掃き出し窓が開いてたように見えて不審だったといえば不審でした。
ともかく、自分が第一発見者にも通報者にもならずに済んだことに心底ほっとしています。


さて、面倒はこれで終わりません。
そもそも、従兄の死を私が知ったのは様子を見に行った翌日か翌々日、なんと警察からの連絡が。「○○にお住まいの××さんをご存じですか?室内で死体が発見されまして…」
たまたま数年前に事務的なやりとりをした際の手紙が部屋にあったのを見てかけてきたそうです。
私も当時詳しいことは知りませんでしたが、従兄は兄弟もいなければ両親も既に亡く、結婚もしていないと聞いていました。
要は後の始末をする身近な人が居ません。
一応私よりはその従兄に近い前述の親戚を紹介しておきましたけれども、警察の他にも色々と連絡が有りました。

  • 役所 「死亡届の提出とご遺体の埋葬をお願いできませんか?」
  • 管理会社 「遺品の整理と、部屋の清掃修繕費用と、滞納家賃のお支払いをどなたかにしていただきませんと。」

もちろん全部断りました。「我が家ではお弔いはできません。○○家の墓も知りません。共同墓に納めて頂いて一向に構いません。」「従兄では法定相続にも掛かりませんし、一切の負担はできかねます。」
お金と人情がいっぱいある人はどうぞお弔いも片付けもなさってくださればよろしいかと思います。私にはムリ。


ただし、1つだけ管理会社のお手伝いはしましたね。それは「残物撤去同意書」。
簡単に言えば「管理物件に残されている故人の財物について、全部捨ててもらっても構いません。後から文句言いません。」という同意書。
これが無いと、管理会社はいつまでたっても部屋の中に残された大量の家財道具を撤去できないのです。
なぜかって?
それらは管理会社や大家の所有物ではないから。
特に今回の場合、遺族(≒遺品の引き取り手)が居ないので勝手に捨てても良さそうなものですが、民法はなかなかそれを許してくれません。
そこで関係者の同意書を取ることで「適当に勝手な管理をしているわけではないですよ」という体面を保つわけですね。
遺族が居れば遺品としてその人達の所有になりますから、基本的に遺族に対して撤去そのものか、代理で撤去した場合にはその費用を請求することができるんですけどね。
撤去費用など、一切請求しない旨も入れて貰って、捺印。
お金さえからまなければお互いこの件で難儀をしているもの同士ですから、これくらいは協力することにやぶさかではありませんよ。


本当ならここまででお終い、となるはずだったんですけれど、調べるうちに「実は過去に結婚していた!」「別れた妻との間に子供がいた!」とか色々と出てきて、また一悶着。
とりあえずの決着が付いたのが夏の終わり。
その内容についてはちょっとプライベートに踏み込みすぎるのでご勘弁を。