ただのにーとじゃないもんっ!!

最近おめでたい話が続いているので、しょうもない話を一つ。


よく結婚して役所に届けを出すことを「入籍する」っていいますけど、あれ間違い。
正しくは「戸籍新製」です。


もうちょっと突っ込んで解説しましょうかね。
現在の戸籍というのは、

  1. 筆頭者
  2. 配偶者
  3. その子

が記載されることになっています。


わかりやすさのために、

  1. 筆頭者:戸籍太郎
  2. 配偶者:戸籍花子
  3. 子:戸籍一郎

という戸籍があったとしましょう。


この状態では一郎君は自分単独での戸籍をもっておらず、太郎さんの戸籍の一員です。
で、一郎君が成長して月子さんというお嫁さんをもらうことになったとします。
このとき、一郎君は戸籍太郎さんの戸籍から離脱して、別個に新しい戸籍を作ることになります。
なぜか?
上の記述を見直してください。戸籍に記載されるのは筆頭者、配偶者、その子であって、子の配偶者は記載されないと規定されています。
そこで一郎さんと月子さんで新しく戸籍を作る=新製するのですな。
「入籍」とは読んで字のごとく「戸籍に新しく入ること」であって、現在は結婚しても戸籍に入るわけじゃない、だから間違いなんですよ。
ちなみに筆頭者は女性でもなれます。結婚でそれをしてる人を見たことはないけど、シングルマザーとかはそうですね。
あと結婚しなくても一郎君は太郎さんの戸籍から離脱して自分単独の戸籍を新製することができます。
「分籍」と言ったりしますね。



じゃあなんで結婚を入籍っていうのよ?って話。
それは旧民法では今と規定が違って子の配偶者も記載されていたから。
昔の戸籍はまさに家制度そのままに記載されていて、家長たる男子を筆頭者として、その子、孫、それらの配偶者に至るまでびっしり書き込まれています。
先の例で言えば、月子さんは太郎さんの戸籍に「子の配偶者:月子」として加入することになります。
つまりこれが「入籍」ってわけ。



戸籍つながりでさらにいうと、離婚を「バツがつく」っていうのは戸籍を手書きしていた時代の名残。
またまた先の例で言うと、太郎さんと花子さんが離婚して花子さんが太郎さんの戸籍から離脱するとき、戸籍の原本(普段私たちが役所でもらうのは「原本の写し」です)の花子さんの欄にバッテンが書かれたから。
ちなみに、よりを戻して花子さんがまた太郎さんと結婚すると、バッテンが消されるんじゃなくて新しい欄に改めて花子さんの名前が記入されます。
ちなみにちなみに、バッテンは戸籍から離脱したらつくので、離婚のほかにも分籍や婚姻による離脱、もっとメジャーなので言えば死亡の際にもバッテンがつきます。
生存者が戸籍の中からいなくなると、その戸籍は戸籍の一覧から取り除かれ、これを「除籍」と言います。
そのまま廃棄されるわけではなくて、除籍の一覧として戸籍と同じように保管されます。
保存期間も法令で規定されているようですが、実務上は永年保存されてるみたいですね。



あと、役所で戸籍(の写し)を取ろうとすると「謄本ですか?抄本ですか?」ってこの上なくわかりにくい聞き方をされることがあります。
最近はCSとやらでだいぶ減ってるだろうと思いますけど。
これは
謄本:戸籍全体の写し
抄本:戸籍の一部の写し
という違い。
別の言い方では
謄本:全部事項証明
抄本:一部事項証明
と言ったりします。これはわかりやすいですね。
先の例では太郎さん、花子さん及び一郎君全員分の記載がされたものが「謄本」、だれか1人か2人だけの分が記載されたものが「抄本」てこと。
部分的に抜き出したものを抄出といったり、部分的な翻訳を抄訳と言ったりすることから想像つくかもしれません。
最近では個人情報保護の絡みで用途によってはむやみに謄本を取らず抄本を取るよう勧められることもあるようですな。



興味のある人は本籍のある自治体の役所に行って、「家系図作りたいから遡れるだけ遡って全部戸籍ください」って言ってみてください。
大抵は引っ越しとかで本籍地を移してしまってるので複数の自治体に交付請求を出すことになりますけど、色々面白いと思いますよ。
多分金額的には1万円弱かかるけどね。