一昔

久しぶりにマルティン・ベックシリーズを手に取っています。


たぶん大多数の方がご存じないかと思いますので少し解説を。
原作は40〜50年ほど前のスウェーデンの刑事小説で、全10巻。
刑事小説ではありますが、随所に当時のスウェーデン社会の停滞と退廃が批判的に描かれていたり、社会派小説な面も持ち合わせています。
翻訳版が出たのが1975年。去年から新約版が出版される運びとなり、旧約版と比較しながら読んでいるところです。


そしてこの小説の最終巻の題名が「テロリスト」。舞台は1974年です。
タイトル通り、主人公たち警察がテロリストと対決する筋書なんですが、出てくるテロリスト(の一味)というのがなんと日本人!
それもそのはずで、当時「テルアビブ空港乱射事件」だの「ドバイ日航機ハイジャック事件」だのと、世界をテロの恐怖に陥れていたのはほかならぬ日本人だったわけで、当然といえば当然の設定なわけですよ。
その日本人が、今度はテロの標的になるご時世になったんだなと本を読み返しながらしみじみと思います。


当時一緒になって共産革命だのなんだのと大騒ぎしていた人たちもまだまだ達者で生き残っているでしょう。
そんな人たちは今どんな顔してニュースを聞いているんでしょうか。