映画の話の続き

昨日はちょっとフィクションに脳みそを引きずられた感想を書いてしまいましたが、もうちょっと落ち着いて書き直してみましょう。

改めて、「すずめの戸締り」です。

 

美男美女のボーイミーツガール的ラブストーリーであり、ロードムービーであり、伝奇的セカイ系物語であり、そして地震もの。

 

ボーイミーツガールは基本的に美男美女だから絵になるんだし、あらかた椅子に変えられたりしてたけど要するに美女と野獣的なものだし、美男美女がキスしてハッピーエンド、まあいいんじゃないですか。

ロードムービー的な点については、これはやっぱりアメリカとかオーストラリアとかのだだっ広い土地でやるから絵になるのであって、日本だとなあって感じがします。せっかくアニメでやるんだからもっとアニメならではの現実ではありえないような視覚効果を使うとか、もうちょっとどうにかできんかったんかなという感じ。個人的には新神戸駅前とか、懐かしくって良かったんですけれど。

セカイ系な点については特に知識がないのでノーコメント。でもハッピーエンドでよかったね。

地震については、当時実際に仕事で多少関わっていただけに却って物語に乗れない感覚です。もちろんこれがあるから「死ぬことなんて怖くない」というすずめのメンタリティにつながるわけですけど、私はフィクションはフィクションで楽しませてほしい方なので、あまり現実と絡めてほしくはないんですよね。ただ、これをもってあの地震もフィクション的に描くことが出来始めたと言えるのかもしれません。

 

で、ですよ。

すずめちゃんさあ、育ての親の環さんに「どうしたって遠慮もするし、コブ付きで婚活はうまくいかんし、私の人生返してよ!」って言われた数時間後に、「未来は光であふれてる」「愛する人がきっと現れる」「愛してくれる人もたくさんいるよ」て、うーんこの…。

でもまあ、若いうちはそれでいいんだろうと思いますよ。子供のために苦労するのが大人の役割なんでしょうから。すずめちゃんがそれに気づいて「ホントに苦労してたのは私よりも周りの大人」って言えるようになるのは、きっともうちょっと後になってのお話なんですよ、きっと。

環さんもね、アラフォーになってそんなこと言ってちゃダメだよと思いつつ、そういうこと言いたいときもあるだろうし、「言えたじゃねえか」というシーンでもあるわけでして、雨降って地固まるの雨シーンですかね。余談ですけど、田舎の漁村に住んでたら「コブ付きでも嫁に欲しい」なんて家はいっぱいありそうな気がするので、そこらへんも実はあんまり乗れないところ。

 

またこの辺も個人的な思い出に引っかかる部分でもあり、私や姉や妹の後見人であった伯母もあるとき祖父と揉めて激昂して「お父さんは弟やその子供ばっかり大事で私のことなんかどうでもいいんでしょ!」とかそんなことを口走ったことがあったなと、見ていて辛いところでもありました。それを横で聞いてて私たちが「あなたが重い」なんて言えるわけもないし、誰かどうにかできたわけでもないし、そんな当時の重たい思いが朧げに胸をよぎるシーンでした。

一応言っておきますが、伯母との仲は良好です。ただ、そのころはみな胸に収まりきらない何かを持っていたんだろうというだけのお話。

 

そんなこんなで、ちょっと個人的な部分に引っかかってあまり楽しめない部分もあった映画でした。でも天気の子よりはきれいなハッピーエンドでよかったと思います。

新海監督の作品について私個人の気に入り具合で言うと、天気の子<すずめの戸締り<<君の名は。かな。