前回の続き

前回「役所の最優先事項は住民にとってのわかりやすさじゃない」てなことを書きました。


じゃあ何が最優先事項なのかをちょっと書きたいと思います。


結論から言うと、「揚げ足を取られないようにすること」ですね。



役所はたくさんの人にたくさんの書類を送ります。
受け取る人も実に様々で、みんながみんな善人で理解のある人ってわけじゃないんですよ。
・反社会勢力
・性格の悪い法曹関係者
・後輩をいびりたくてウズウズしている元公務員
カバチタレ、難波金融伝の愛読者
その他、文言のスキをついて不当に利益を得ようとする人たちがたくさんいるわけですよね。


ごく荒っぽい例を挙げると「高齢者にお金が支給されます」って書いたとします。
法令上は「〇〇年4月1日時点で市内に住民票を有する満65歳以上の日本国民に金1万円を支給する」的な規定なんでしょうね。
だけどわかりにくいからって「高齢者にお金が支給されます」なんて書き方したら、64歳の人とか住民票のない人とか外国籍の人とかが「通知にお金がもらえるって書いてある、書いてある以上お金を出せ」っていうのは目に見えてるでしょ。
文句が出るくらいならいいんですけど、下手すりゃ裁判所までが「そんな書き方するやつが悪い、通知通りに支給しろ」って判決出しかねないんですよね、この国って。


分かりやすい文書というのは、たいていにおいて別の解釈を入れようと思えばいくらでも入れられるようになってるもので、そうすると上に挙げたようなろくでもないことが起きてしまうのだということですね。
上司に書類チェックされるときもいの一番に言われることは「揚げ足を取られないように」「ほかの解釈が絶対に入り込まないように」ということでした。
もちろん厳密さを保ちながら分かりやすい文章を練ることも必要で、そういう視点ももちろん要求されるんですけど、それも限界がありますからねえ。
そもそも、そんな上等なことをやるだけの研修もなければ教育もないし、それほど御大層な賃金もらってるわけでもないし。
大体、役所の人も法令改正やら人員削減やらクレーム対応やら議会対応やらその他いろいろ忙しくしてて書類作成だけ専任でじっくり取り組めるわけじゃないので、そんな民間のチラシなんかと同じようなクオリティ期待するほうが間違ってるってもんです。


ただし、素で文章作成能力の低い人もいるし、あれこれ考えるのが面倒なので前任者が作った書類をろくに推敲もせず丸パクリで日付だけ変えて出すっていうのもよくあります。
だって、前回OKだった書類だから日付だけ変えればOKに決まってるでしょ。当然だよなあ?ってなるのをだれが止められるの?